各自動車会社では近年、ADAS（先進運転支援システム）を積極的に導入しています。主な目的としては、以下の２つが挙げられます。

• 事故の未然防止（自動ブレーキシステムによる衝突回避、死角により発生する接触事故防止など）
• 運転手の負担軽減（高速道路や駐車での運転支援など）

特に「事故防止システム」については、悲しい結果しか残さない交通事故をゼロにするため、より高性能・高機能な装置の開発が望まれています。

交通事故を 仮想実験データの解析を利用して防止する

交通事故のほとんどは、見落としや判断ミス、操作ミスなどの「ヒューマンエラー（ドライバー自身のミス）」が大きな要因となっています。

ただ、ヒューマンエラーはドライバーの習熟度や年齢、体調や疲労などの「個々の、その時々の事情」が要因として大きくあるため、一つ一つの事故パターンの検証を重ねることは容易ではありません。

また、「生身の人間による、実際にヒューマンエラーを起こさせての実車事故実験」は倫理的にも実現不可能であるため、システムの妥当性や安全性を検証する方法は、実車利用では非常に限られることになります。

本研究室では、仮想空間を利用したシミュレーションを利用し、ヒューマンエラーを数式化して仮想試験に利用できるかを検証しています。

まず、発生する交通事故の原因は「わき見運転」であることが多いため、その検証実験を行うために、マルチエージェントモデル上で短時間で数多くのわき見事故を起こすシミュレーションを実施しました。

「ヒューマンエラー原因となるわき見時間や頻度」などの条件を変えながら、実在する道路をモデルにしたシミュレーションを重ねることで、数多くの事故データを得ることができます。

シミュレーションにより得られた多くのデータを基に精度ある実用性な予測ができるかを検証し、高度なADASの安全・短期間な開発につなげていきます。