群馬大学理工学部・大学院理工学府 電子・機械類 機械プログラム エネルギー環境研究室


Polarization Ratio -偏光比-

問題です。昼間の空が青く、夕方の空が赤く、雲が白っぽく見えるのは、なぜでしょうか。

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【答え】太陽光が大気内や雲自体に含まれる微粒子にあたって「光の散乱」が起こりますが、
微粒子の大きさによって、私たちに届く散乱光の波長の強さが変わるためです。

 太陽光が大気中の微粒子に当たると「散乱」が起きます。「散乱」とは、「光のエネルギーによって小さな粒子が振動し、改めてその粒子から光が再放射される現象」ですが、その飛び散り方は、粒子の大きさや材質によって変わることがわかっています。

 空の色については「レイリー散乱」という、光の波長よりはるかに小さい大気中の微粒子での散乱が関係します。この場合、散乱の強さは波長の⁻⁴乗(1/λ⁴)に比例します。つまり波長の短い光ほど、強く散乱されることになります。
 昼間の空が青いのは、青色の波長(約450nm)の方が赤色の波長(約650nm)より短いため、青色の波長を大気中の微粒子が強く散乱していることによります。
 ただし、朝や夕方は太陽が低い位置になって、光が大気の長距離を通ることになり、短い波長の光は通過途中で散乱されてしまうため、朝焼けや夕焼けの赤い光だけがこちらへ届くことになります。

 雲は大気中の微粒子より大きい、水滴や氷の粒からできていますので、「ミー散乱」が起こります。この場合、光の三原色となる赤・緑・青の波長光すべて同じ強さでの散乱が起きるため、太陽光と同様の白色光が私たちに届くことになります。天気が悪い日の雲が黒っぽいのは、雲の厚さや氷粒の増大により、散乱光が雲の内部で減衰することによります。

 このような身近な例からも、「対象となる粒子によって、光の散乱の状態も変わる」ということがわかります。
 更に、散乱光のなかでも、特定の向きに揃っている状態である「偏光」をつかまえることで、更に詳細な粒子の情報を得ることができます。それが偏光比を利用した測定法です。

散乱光を用いた微粒子の材質と大きさの計測

目に見えないほどの小さな粒 正体を突き止めるには

海洋などへ放出されたプラスチックを海洋生物が摂取してしまうことが、近年「海洋性プラスチック問題」として提起されています。特に、波や太陽光の影響により目に見えないほどの微粒子となったマイクロプラスチックは、食物連鎖を通じて人間も摂取してしまう危険性が高いものです。

しかしその実態を調べるにも、プラスチック自体の種類や大きさは多岐にわたり、更にプラスチック以外の物質との区別も必要となるなど、非常に手間がかかるのが課題です。

この「目に見えないほどの小さな粒を見つけて、更にその大きさや材料の情報も一緒に知る」という難題の解決法として、偏光比の利用があります。「粒子の粒径や材質によって、散乱された光の偏光が特徴的なパターンを示す(偏光比)」という物理的性質を利用したもので、目に見えない微粒子の大きさや材質を推定することができます。

本研究室では、ミー散乱・レイリー散乱の特徴を生かした「レーザー散乱計測法」を採用し、粒子の光学的同定実験を行っています。