群馬大学理工学部・大学院理工学府 電子・機械類 機械プログラム エネルギー環境研究室


Jet Noise -ジェット騒音-

問題です。手を叩くと「パン!」という音がします。ではその音は、どちらの手が鳴ったものでしょうか?
答えはこちら
【答え】鳴ったのは、左手でも右手でもありません。手のひらから押し出された「空気」が、「何もない空間」で音を出しています。

 ジェット噴射による騒音も同じです。ジェットエンジン自体が音を出しているのではなく、噴出された気体の運動によって、その周りの何もない空間から音が出ているのです。

 細い筒から出る空気は、必ずモクモクとしています。左図のような「煙突から出る煙」が、とても分かりやすい例と思います。
 これは「筒から流れ出た空気では、必ず周期的な渦が形成される」という現象で、この「周期的な渦」での空気の運動が音を発生させ、それがジェット騒音の原因となります。

 しかし、このすべての渦から音が出るわけではないので、騒音対策を行うには、音源の「位置」と「規模」を知る必要があります。

ジェット騒音低減研究についての詳しい解説はこちらへ!

※ジェット騒音研究については、2009年度 日本機械学会賞 を受賞しています。
「光学CT法を用いた超音速噴流騒音の断層可視化」 日本機械学会論文集,74巻,738号,B編 (2008年2月)


クラスタロケットのジェット騒音調査

ジェットエンジンの音を実験室で作り、騒音の原因を調べる

ジェットエンジンは飛行機やロケットに搭載され、燃料を燃やして発生した高温・高速のガスを後方に噴射し、その反動の力で機体を前へ動かします。吹き出すガスが高速なほど機体を速く飛ばすことができますが、それだけ発生する騒音が大きくなるということも知られています。

このジェット騒音はノズル自体ではなく、排気された後のガスの運動により発生する音波によるものです。騒音防止対策をするには、その音波が「どこから来るのか」「どう大きくなるのか」を明らかにする必要があります。

また、宇宙船打ち上げなどで利用するロケットエンジンは、数本のジェットエンジンを束ねた「クラスタロケット」になっていることが殆どです。束ねることで推進力は大きくなる一方、音の共鳴や干渉で騒音が大きくなる可能性を含んでいます。ここで発生する騒音は衝撃波となり、宇宙船の積み荷(ペイロード)内の機器や電子部品を破損する危険があります。

本研究室では、実用化されているジェットエンジンと同条件になる機器を用意しつつ、燃焼は行わずに排出されるガスと同様の物理条件を持つ「軽いガス」での噴射実験を行うことで、実験室内でも安全にジェット騒音を再現しています。

現在、「クラスタロケットのジェット騒音を、ジェット表面でのジェット騒音の屈折と反射で説明できるのでは?」と考え、以下の2つの視点での研究を行っています。

  • マイクロフォンによるジェット騒音の音響計測

  • シュリーレン法によるジェットの可視化実験 ※シュリーレン法では、空気の密度差を可視化することができます。